実際のムスリムの声

訪日ムスリムが求めるものとは

訪日ムスリムは、日本人が外国へ行って、現地のものを見たり、味わったり、楽しみたいと思うのと同じく、日本らしさや、日本でしか体験できない文化や食事を楽しみたいと思っています。「ハラール認証を取得しなければ、ムスリムは利用しない」というのは、必ずしもそうではなく、一部のムスリムは求めますが、ハラール認証がなくとも、安心して信頼できるハラール性が担保できれば利用することは可能です。ハラール認証があれば尚良いですが、事業者の方々は、過剰・過敏にならず、費用をかけなくても出来る限りの継続可能なサービスを提供していただくことが必要であり、そうした「おもてなし」の姿勢が喜ばれるのではないでしょうか。

聖典クルアーンにある「おもてなし」について

■2:267.信仰する者よ。あなたがたの働いて得たよいものと、われが、大地からあなたがたのために生産したものを惜しまず施せ。悪いものを図って、施してはならない。目をつむらずには、あなた(自身)さえ取れないようなものを。アッラーは満ち足りておられる方、讃美されるべき方であられることを知りなさい。

ムスリムを知る

イスラームや、それを実践するムスリムを正しく理解することで、自ずと何が喜ばれるのかが分かります。イスラームは寛容で慈悲深い宗教であり、無理を強いる宗教ではありません。ムスリムを「おもてなし」することは、それほど難しいことではないと気付いていただけると思います。

ムスリムとは

ムスリムとは、イスラーム教を信仰している人、唯一神、アッラーに身を委ねている人のことを言います。イスラーム教徒と一口にいっても、アジア、中東、北アフリカ等のイスラーム圏のほか、ヨーロッパや欧米にもムスリム人口は分布されており、日本でも人口は増加しています。世界のムスリム人口は16〜20億人、4人に1人はムスリムと言われています。そのため、文化背景、食事の趣向も様々です。しかし、同じ信仰を持ち、同じ教えのもと同じ行為を日常的に行うことから、共通の性質はあります。

【共通する性質の例】

・挨拶が世界共通   ・同胞を思いやる気持ちが強い
・清潔好き      ・忍耐強い
・結束が強いなど

イスラームとは

イスラームとは唯一神(アッラー)が、最初の預言者アダムを使わし、「アッラーは存在する」ということを人々に知らしめてきました。最後の預言者ムハンマドが、人類における最後のアッラーの使徒とされています。その間124,000人の預言者が存在し、同じメッセージを人々に伝えてきました。アッラーとは唯一神であり、全創造物の創造者であるとされています。完全にアッラーに帰依する人をムスリムと言います。そしてムスリムには、六信五行と呼ばれる大切な教えがあります。

【六信】

唯一神「アッラー」、「天使」、「啓典」、「使徒」、「来世」、「運命」 を信じることです。


【五行】

ムスリムに課せられた五つの義務行為のことです。

1.「信仰告白」(アッラーのほかに神はない。
  預言者ムハンマドが神の最後の使徒である。
  この2文を信じて、告白すること)
2.「礼拝」(1日5回の礼拝)
3.「喜捨」(決まった時期に決まった額を喜捨すること)
4.「断食」(ラマダーン月の断食)
5.「巡礼」(決まった時期にメッカの地を巡礼すること)


ハラール

「ハラール」は、聖典クルアーンに称されている言葉であり、「イスラーム法において“合法”である」という意味になります。その逆の不法は「ハラーム」と言います。食に限らず、ムスリムの生活全般において当てはまることで、ムスリムがムスリムとして生活する際の判断基準となります。

ムスリムが食することができるハラールな食品は、野菜、魚、穀類、果物などたくさんあります。

そのうちハラームなものは限られており、
以下になります。

・ハラール屠畜されていない食肉、その派製品
・豚、その派製品
・酒、それを含む調味料
 

食肉(豚肉以外)に関しては、ハラール屠畜で処理した肉であれば食することができます。

※ハラール屠畜:「ビスミッラー」といいながら、鋭利な刃物でムスリムが屠畜をします。
※不浄な物(ナジス)を飼料として与えられた動物は、ハラール屠畜をしてもハラールにはなりません。


したがって、ムスリムからは“ハラームを除く食事の提供”が求められます。

〈上記以外でムスリムが食べてはいけないもの〉
牙をもつ動物、捕食動物、害虫、毒性・酩酊性のあるもの、両生類、身体に悪影響を及ぼす・危害のあるもの(薬品、毒性キノコ等)

〈不浄な物(ナジス)〉
豚、犬(唾液、毛、皮膚、排便等)、ハラームなものと混じったもの・直接触れたもの、人や動物の排泄物・血、膿み、嘔吐、胎盤、死肉、ハラール屠畜されていない動物、アルコール飲料・アルコールを含む食品

ハラール

食事におけるムスリム対応例(飲食店)

●ホテルでは、朝食だけでもムスリム対応することで、ムスリムの宿泊客の安心感が得られます。
●ピクトグラム等を用い、食事に何が使われているのか、もしくは食材、調味料を英語で記載するなどの情報開示をすることで、利用者が選ぶオプションを与えることができます。ただ、ハラームなものが多く並ぶと、気分を損ねる可能性があるため、設置場所をわける等の配慮をすることが好ましいです。

対応例

  • ハラール屠畜をされた肉を使用して調理したり、加工品などを利用するにあたり、実際の肉のパッケージに記載されているハラールロゴの画像を表示しておくことで信憑性が高まりますが、少なくともハラール肉を使用している場合は、それが理解できる表示をすると良いでしょう。
  • ムスリムの中には飲酒に使用されたグラスや、ハラームな食事に使用された食器やカトラリーを嫌がる人がいますので、その場合は専用の物、もしくは使い捨ての物を備えておくと良いでしょう。
  • 海産物や山菜、果物など、その土地の季節の特産物を紹介するなど、特に肉類を用いないメニュー構成をすると良いでしょう。
  • みりん、料理酒、洋酒を使用しないことが望まれます。
    醤油、味噌に関してもハラール性の確認できるものと代替えすることが好ましいです。
  • 揚げ物油はハラールでない食肉をあげた油を使用しないことが望まれます。
    (魚介、野菜に使用したものは可)
  • 食肉そのもの以外で、その派製品に含まれる物もチェックしておくことが望まれます。
    (チキンエキス、ポークエキス、ゼラチン等)
  • ムスリムスタッフがその場にいると、全てのムスリム対応において信憑性が高まります。

ハラール認証について

現代の食品技術が発達・複雑化したことで、一般のムスリムが一目見ただけではハラール性の確認がしづらく、ハラール性の確保が困難になりました。そのため、第三者機関が、ハラール性を確保するために製造者を調査・監査し、確認ができたものにおいて、ハラールロゴを譲渡し、それを事業者が掲載することにより、一般のムスリムが一目でそのハラール性の確認ができることを可能にするのが「ハラール認証」です。食肉や加工食品等のハラール認証は、大変有意義であると言えますが、飲食店や宿泊施設においては、ハラール認証を取得することよりも、具体的に事業者や従業員の方々にどのようなムスリム対応ができるかを示していくことが重要と言えます。まずは、最低限できるムスリム対応を実施し、さらにハラール認証については、メリットを考慮したうえで、実施に踏み切るかどうか検討されることをお勧めします。


ムスリムに対するマナーや留意点
  • 異性間の距離は保ち、体に接触するようなことは避ける方が良いです。
  • 接客員は極力、露出のある服装は避ける方が良いです。
  • 接客に関しては、その場にムスリムスタッフがいると安心に繋がりますが、いない場合はムスリムの習慣をよく理解したスタッフを配置させることが好ましいです。
  • 飲酒する客から離れた場所に着席してもらうなどの配慮をすることが好ましいです。
  • 「ムスリムフレンドリー」という造語を日本人の解釈で、「ハラール以下」というような意味合いで使用することがありますが、誤りです。言葉の通り、「ムスリムに友好的」ということは、食事においては、ムスリムフレンドリーと謳った限りは、「ハラール」であることを意味するので、ハラールでないものを提供しないように注意しましょう。
  • ラマダーン期間中は1ヶ月間、断食をする月であり、この時期に旅行する人は少ないですが、旅行者でも断食をする場合があります。断食明けの食事(イフタール)は夕食と同じようにとることができますが、ファジュル(夜明け前の礼拝)前にとる断食開始前の食事(スフル)が宿泊施設内でとれると便利でしょう。具体的にはスープや果物のような軽食、水分を摂取できれば良く、ナツメヤシの実などあれば最適です。リクエストに備えて応じられるようにしておくと尚良いです。
  • ラマダーン中は、旅程を無理なく、断食明けの後も休めるように配慮すると良いです。
  • 女性に対するサービスは、特に女性であることが求められるため、マッサージやその他の接客員も女性であることが好ましいです。
  • 周辺に女医がいる病院や医院を確認しておくと良いです。もしくは、ムスリムの看護師(インドネシアからの研修生等が在籍している病院や医院)がいる内科、外科、歯科等の確認をしておくと良いです。
  • 男女が同じ場所で交わることが禁止されているため、全ての施設において男女別を設けるか、時間帯でわけて使用する等の方法を用いると良いです。
  • 他宗教に関わる事柄は避ける方が良いです(客室内に設置したバイブルや仏典があれば取り除くなど)。
  • 音楽は基本的に聞かないムスリムが多く、聞く場合はナシードと呼ばれる男性や子どもの声だけ、もしくはダフといわれる太鼓を用いたものが良いです。特に女性の歌謡曲は好まれないので、一般客向けにかける必要がある場合はボリュームなどに配慮すると良いです。
  • 戒律上の理由から犬を好まないムスリムもいるので、犬と同席する空間が無い方が好ましいです。
  • パチンコや競艇、競馬はムスリムにとってハラームです。